火曜日, 5月 30, 2006

ルーカス方程式と合理的期待仮設






平河総研

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ルーカス方程式と「合理的期待仮設」       山崎行太郎
「ルーカス総供給方程式」によると、総需要(有効需要支出のマクロ的
総額)がいくら増えても実質的には生産は伸びず経済成長も雇用拡大も
起こらない・・・ということになり、これがケインズ経済学的な「総需
要拡大による不況の克服、あるいは景気回復・経済成長」という論理を
否定し排斥する論拠となっている。
(現実の生産水準)ー(自然失業率に対応した生産水準)=a・(《実際の
物価水準》ー《期待【予測】物価水準》・・・・・・(「ルーカス型総
供給方程式」)
今更、言うまでもなく、自民党小泉執行部は、このルーカス的なケイン
ズ経済学否定論という経済思想(新古典派、新自由主義)に凝り固まって
いる。したがって、小泉執行部は、どのような経済学者たちからの進言
や提案も、この理論に反するものはすべて無視し続けている。では、こ
の奇妙なルーカス方程式は恒常的に正しいと言えるのか。正しいとすれ
ばその根拠は何か。
実は、この方程式を成り立たせるためには、いくつかの仮説が前提され
ていなければならない。たとえばその一つが、いわゆる人々の「合理的
な期待仮説」である。つまり、人々の物価に関する「合理的な期待(卵ェ)」が常に的中しているはずだという仮説である。そんなはずがな
い、と言ってもはじまらない。少なくとも、それを前提的に肯定すると
ころにこのルーカス率いる「合理的期待形成論学派」の経済学的な本質
と新しさがあるからだ。
では、人々の現実の物価水準に関する「合理的な期待(予想)」が常に的
中するとすれば、どういう経済学的な現象がおこるのだろうか。たとえ
ば労働の需給関係(労働供給曲線)はどうなるだろうか。要するに失業
率、あるいは雇用問題はどうなるだろうか。
伝統的な経済学的常識では、総需要が増大すれば生産活動が拡大し、労
働需要もそれにつれて増えていき、その結果として雇用率は上昇してい
くはずである。つまり失業率の低下という現象が起こるはずである。し
かし、「ルーカス型総供給方程式」を前提すると、そうはならない。
総需要が拡大して生産活動が活発化(企業資本設備の稼働率が上昇)して
も、労働需要は伸びない。つまり失業率は低下しない。なぜか。実は、
そこで、労働者たちや経営者たちの「合理的な期待(予測)」という問題
が発生する。結論を言えば、生産拡大も雇用の増大も、物価上昇を予測
した上での「賃金」や「価格」の上昇によって、吸収されてしまうとい
うものだ。
労働者達は、物価上昇を見込んで(合理的期待?)、それに見合う「賃上
げ」を要求し、経営者側は、労働者に支払うべき賃金の上昇を見込んで
(合理的期待?)、それに見合う生産物の「値上げ」を要求するからであ
る。要するに、総需要の増大による生産拡大も労働需要の拡大も、賃上
げや価格上昇によって相殺されていくということである。

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