土曜日, 6月 24, 2006

山崎行太郎コーナー
「小さな政府」主義の危険な落とし穴ーリバータリアニズムからアナーキズムへー
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自民党小泉一派が主張する「小さな政府」とは、言うまでもなく何もしない政府
(笑)…のことである。そしてその行きつく先は政府そのものが必要ないと言う
無政府主義(アナーキズム)である。

むろん、これは極端な議論だが、「小さな政府」という美しい言葉がその背後に
無政府主義的な国家解体への思想的可能性を秘めていることは憶えておいてよい。
おそらく、今回の衆議院選挙で小泉改革を熱狂的に支持した国民の多くは、「公
務員を減らせ」「官から民へ」「利権構造の打破」というプロパガンダ
の喧騒の中で、無意識のうちに国家解体の可能性を夢想していたはずである。

さて、小さな政府論の多くが、実はブキャナンらの「公共選択論学派」の思想と
理論からの受け売りと切り売りであり、その理論的根拠も学問的背景も知らずに、
絶対的真理のごとく盲信し、思考停止状態で政権運営に当たっているのが小泉政
府であると前回、書いたが、アメリカで「小さな政府論」を理論的に主張するグ
ループがもう一つある。これも冷戦勝利後に急速に勢いを増しているグルー
プだが、リバータリアニズムとかリバータリアンと呼ばれる一派である。この
リバータリアニズムという思想潮流も、社会主義批判という側面を強く持つ
が故に、保守派に安易に受け入れられやすい。

その思想的源流をたどれば、「自由市場主義」のオーストリア学派のミーゼスや
ハイエクは言うまでもなく、「市場」というものを発見し、経済学という学問を
打ち立てたアダム・スミスにまでたどり着く。

しかし、ここで言うリバータリアニズムとは、厳密に言えば最近のアメリカ合衆
国を中心として発達し、大きな影響力を持つようになった思想であって、「個人
主義」「個人の諸権利」「法の支配」「制限された政府」「完全自由市場」など
を強く主張する。サッチャー革命、レーガン革命以後、アメリカを中心に民主主
義国家の経営理念のひとつとして根強い支持を持つと言われている。

政治思想的には、国家の介入を最小限に減らし、書く個人の自由を尊重するとい
う思想であり、経済思想的には、政府の規制を極力避け、民間による経済活動の
自由を拡大するためにも規制緩和が必要であるとするものだ。

アメリカの思想的植民地と化している現在の日本で、この政治思想と経済思想が
影響力を持たないはずがない。特に竹中平蔵に洗脳されている小泉執行部は…。
要するに「小さな政府」主義とは、絶対的な真理でもなんでもない。(続く)

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